目を閉じて演奏すること
2015.02.01. 04:29
「東北を一人旅したとき、電車の車内で津軽三味線の生演奏があったんですよ。
・・・あれはすごかった!
鳥肌が立ちましたよ。
僕、涙が出たんです。」
これは、弁護士になったガイゲの先輩の一言。
魂が揺さぶられ、涙が出るほどの生演奏を聴いたのは、みなさんはいつでしたか。
1年ほど前に先輩弁護士さんとこの会話をしたとき、真っ先に思い出したのが中学校同級生の山中君のことでした。
卒業前に、彼は全校生徒の前で素晴らしい津軽三味線を披露したのです。
それがガイゲにとって初めての津軽三味線の経験でした。
彼は、中学卒業と同時に三味線を学ぶため東北に行くという異色な人生をたどった人です。
津軽三味線は、とても情熱的。
バイオリンでは弓が板に当たるのはご法度ですが、津軽三味線はバチでボディをガツガツ叩くのです。
これでもか!これでもか!!って。
バイオリンと比べると、「もうやめて」「痛い!痛い!!」と、体を縮ませてしまいそうになります。
しかも演奏中に「はぁ!!」「おいやぁ!」とか叫び出す。
津軽三味線には、バイオリンではありえない サディズム 異世界が存在するのです。
津軽三味線のバチの音は、弦だけでは表現できない狂気じみた”正体不明の力”のような情熱を、音楽に与えているように感じます。
そんな素晴らしい津軽三味線の生演奏を、25年ぶりに聞くことができました。
しかも山中君の演奏で!
(彼は現在プロの津軽三味線奏者・洗足学園音楽大学の講師です)
中学同窓会会場でiPhoneで録画したため雑音が多いですが、ご本人に許可を頂きUPしました。三味線いいですね。
※もう少し綺麗な演奏は、この辺で。彼の演奏です。
山中君は目を閉じて三味線を演奏します。
津軽三味線は、もともと盲目の方が演奏したものです。
現代では目を開けて弾く人もたくさんいますが、
ぼくは、盲目の津軽三味線奏者を誇りに思って、
目を閉じて演奏しています。
動画最後のコメントは、無知な私にはとても感動的でした。
「音」と「自分自身」しかいない閉ざされた暗闇の中で、盲目の奏者は何を感じながら津軽三味線を演奏したのでしょうか。
指揮者や聴衆が見える状態で演奏するのとは異なる世界が、彼の津軽三味線にあったような気がします。
目を閉じて演奏するということは、「暗譜した」とか「ハイポジションを目で位置確認しなくても良いだけのヒット率(技術)がある」とか、そういうレベルを超越した、「自己と音表現の究極に真正面から向き合うこと」なのかな、と考えさせらた演奏でした。
バイオリン一筋ではなく、他の楽器演奏を聞き、「技術をも凌駕する音楽性とは何か」考える体験。
とても有意義でした。山中君、ありがとう!